研究概要 |
本研究では、アレイCGHを用いて腎細胞癌(CCC)の発症にかかわる遺伝子異常を同定し、さらに病気の進行(悪性化)の過程で付加される遺伝子異常を同定することを目標としている。そこで、(1)アレイCGH解析によって、26例の腎癌におけるゲノム増幅領域と欠失領域の絞込みを行い、5q, 7q, 16pのgain、 3p, 8p, 9q 14qのlossを高頻度に検出した。(2)トランスクリプトーム解析により、アレイCGH解析をおこなった症例のうち22例について、遺伝子発現(mRNAの発現)をマイクロアレイを用いて網羅的に調べた。ゲノムコピー数異常(copy number aberrations; CNAs)のある症例とない症例とで、明らかに発現のことなる遺伝子を抽出したところ、高頻度にgainを認めた染色体5,7番に多くの高発現を示す遺伝子が認められた。逆に有意に発現の低かった遺伝子は、高頻度にlossをみとめた染色体14番と3番に最も多く存在した。これらのことから、CCCではCNAsは遺伝子発現異常と相関していることがわかった。さらに、ゲノム異常と病理学的組織像とを比較した。14qのlossはhigh-grade CCCで付加されたゲノム異常であることがわかった。Low-grade CCCとhigh-grade CCCの遺伝子発現プロファイルを比較すると、有意に発現低下している遺伝子は染色体14番と9番に多く存在傾向があることがわかった。すなわち、high-grade CCCでの14qでのコピー数低下は、この領域での遺伝子発現低下に関わっていることが示唆された。抽出された遺伝子のいくつかはreal-time PCRにより、実際に腎癌で遺伝子の発現が増強あるいは減弱、消失しているかどうかを調べ、マイクロアレイのデータとよく相関していることを見出した。
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