(目的・意義)我々はHsp90-抗原複合体は、樹状細胞に非常に効率良くtargetingできることを示し、癌抗原特異的な細胞傷害性T細胞(CTL)を活性化することを明らかにしてきた。本研究では、Hsp90遺伝子と既知の癌抗原遺伝子との融合遺伝子を用いたDNAワクチンの有用性についての基礎的検討を計画した。癌抗原としては、我々が同定した癌抗原サバイビンを用いて、Hsp90-癌抗原融合遺伝子によるDNAワクチンの有効性をマウスを用いて評価した。 (結果)ヒトHsp90遺伝子とヒトサバイビン遺伝子の融合遺伝子をFLAG tag付きベクター(pCAGGS)に挿入した。またコントロールとしてサバイビン単独DNAおよびHsp90単独DNAワクチンを作製し、マウスリンパ腫細胞A20を用いて比較検討した。まず投与方法の最適化を検討する目的で、サバイビン単独DNAワクチンを用いて、大腿四頭筋への筋注とfootpad内免疫の有効性を比較した。その結果、footpad内免疫法の有効性が高いことを示した。そこで、Hsp90-サバイビン融合遺伝子ワクチン、サバイビン単ワクチンの抗腫瘍効果を比較検討した。その結果、Hsp90-サバイビン融合遺伝子ワクチン、サバイビン単独ワクチンはHsp90単独ワクチンと比較すると腫瘍増殖および生存率において有意な抗腫瘍効果を認めた。さらにHsp90-サバイビン融合遺伝子ワクチンは、Hsp90-サバイビン単独ワクチンと比較して、腫瘍増殖抑制、生存率ともに有意な抗腫瘍効果を確認し得た。またHsp90-サバイビン融合遺伝子ワクチンで免疫されたマウスでは有意なサバイビン特異的CTLが誘導されていた。この抗腫瘍効果がワクチンとして用いたサバイビンに対するCTL誘導によることを示すものと考えられた。
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