研究概要 |
Egr-1の強制発現により活性化される遺伝子を同定するため、ます培養肺上皮細胞および肺癌細胞に対し、レトロウィルスベクターを用いてEgr-1遺伝子の導入を試みた。しかし、複数回の施行にもかかわらず、Egr-1を安定発現する細胞を得ることはできなかった。この結果は当初の予測に合致したものであり、Egr-1の発現により複数の癌抑制遺伝子が活性化している可能性が強く示唆された。そこで我々はtet-on systemを使用できるように改変を行ったレトロウィルス系を構築し、これを用いてEgr-1遺伝子導入を試みた。その結果、tetracycline添加時にのみEgr-1を発現する細胞を得ることに成功した。これらの細胞を用い、tetracycline添加に伴うEgr-1発現を経時的に見てみると、誘導後2時間で蛋白レベルの良好は発現が見られた。そこで、Egr-1誘導後12時間後にRNAを抽出し、このサンプルを用いて発現亢進した遺伝子をGeneChip法により解析した。現時点ではまた解析途中であるが、IGFBP-4,IGFBP-2の他、plasminogen activator inhibitor,NAB2遺伝子等の発現が亢進してくることが明らかとなっている。Egr-1プロモーターにはIGFBP-4やIGFBP-2と同様にCpGアイランドが存在しているが、検討した20種以上の肺癌細胞において全くメチル化は見られなかった。また肺癌組織におけるEgr-1,NAB2の発現状態について検討を行い、肺癌細胞には豊富なEgr-1,NAB2の発現が見られることが明らかになった。このことから、Egr-1およびその機能調節因子であるNAB2の発現は癌化した肺上皮においても保たれていることが示唆され、エピジェネティック変化はEgr-1に発現制御される更に下流の因子に起こっている可能性が考えられた。
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