研究概要 |
1.胃MALTリンパ腫をピロリ菌除菌に反応するA群,不応性症例の中でAPI2-MALT1キメラ遺伝子が陰性なB群,そして遺伝子陽性なC群に分類することをわれわれは提唱している.これらに沿って分類した症例を用いてIgH遺伝子再構成解析を行ったところ,A群には特徴的なVH断片が選択されているが,B・C群ではそのようなVH断片は認められないことを明らかにした.このことから,除菌反応性A群は特異な集団を形成し,また除菌不応性B・C群への移行は一般的ではないことが明らかとなった.(Sakuma H, Inagaki H, et. al. Mod Pathol, 2007) 2.日本人に発生した節性辺縁帯B細胞性リンパ腫65例を臨床病理学的に解析した.これらの症例は,5年全生存率85%,5年無失敗生存率60%を示し,欧米症例と比較して,予後良好を示すことが明らかとなった.さらにわれわれは症例を4群に分類し,大細胞成分を含む症例が予後不良を示すことを明らかにした.(Kojima M, Inagaki H, et. al. Cancer Sci 2007) 3.口腔原発のMALTリンパ腫は稀である.われわれは7症例を検討し,以下の2亜型に分類した.1)濾胞周囲に増殖し,小唾液腺に対しリンパ上皮性病変を形成し,形質細胞分化を示すタイプ,2)濾胞内にcolonizationを示し,形質細胞分化は少なく,残存上皮をほとんど示さないタイプ.(Kojima M, Inagaki H, et. al. Pathol Oncol Res 2007) 4.前立腺原発のMALTリンパ腫は非常に稀であるが,9年間経過観察が可能であった症例を報告した.症例はTURにより寛解を得たが,7年後に再発を示した.しかし腫瘍の進展は認めず,再びTURのみで寛解が得られた.本症例は前立腺原発MALTリンパ腫の治療を選択する上で重要と考えられた.(Li C, Inagaki H, et. al. Pathol Int 2008)
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