神経膠腫(glioma)は形態学的に多彩な組織像を呈するため病理診断が困難なことに加えて、多くの glioma は治療抵抗性で、いまだ有効な治療法の確立には至っていない。この原因の一つにglioma の組織多様性があるが、今回、組織学的に診断困難症例や組織多様性を示すgliomaに対する抗癌剤感受性など、その臨床病理学的意義を明らかにするために各組織型における遺伝子変異を検索した。 症例はastrocytic tumors 50 例、oligodendroglial tumors 30例に加えて、新規抗癌剤であるtemozolomide(TMZ)を投与された悪性 glioma 33 例の解析も行った。Laser Capture Microdissection Systems(Arcturus)を用いて各症例において組織型の異なる複数の部位からDNAを抽出し、1p/19qおよび9p、10p、10qの染色体のLOHを検索するとともに、X染色体不活化をHUMURA遺伝子のメチル化によって検出した。また、O^6-MGMTのメチル化の有無をmethylationspecific PCR で検索するとともにタンパクの発現を免疫組織化学的に検出した。 得られた結果から多様な組織型を示す悪性gliomaでも大部分はモノクローナルに発生することが示された。しかし、一部の症例では各組織で異なるgenotypeを示すことがあり、各々independent に発生する症例もあることが示唆された。悪性神経膠腫では各組織型におけるO^6-MGMTのメチル化が異なる症例が多く、その発現もモザイク状に検出された。TMZの感受性を判定するには、組織型ごとにO^6-MGMTのメチル化や発現の違いも考慮する必要性があると考えられた。
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