神経膠腫(glioma)は形態学的に多彩な組織像を呈するため病理診断が困難なことに加えて、多くのgliomaは治療抵抗性で有効な治療法の確立には至っていない。組織多様性を示すgliomaに対する抗癌剤感受性など、臨床病理学的意義を明らかにするために各組織型における遺伝子変異を検索した。 症例はastrocytic tumors 120例、oligodendroglial tumors 40例に加えて、新規抗癌剤であるtemozolomide (TMZ)を投与された悪性glioma 50例の解析も行った。各症例において組織型の異なる複数の部位からDNAを抽出し、1p/19qの染色体のLOHを検索するとともにO^6-MGMTのメチル化とタンパクの発現を検出した。得られた結果から多様な組織型を示す悪性gliomaの一部の症例では各組織で異なるgenotypeを示すことがあり、各々independentに発生する症例があることが示された。また、各組織型における治療反応性因子の変異は均一ではなく、特にO^6-MGMTのメチル化や発現はモザイク状に検出されるが、部分的O^6-MGMTのメチル化および1p/19qのLOHがみられる症例では、無増悪生存期間および全生存期間ともに延長し、奏効率も有意に良好であった。 悪性神経膠腫では各組織型におけるTMZの治療反応性因子の状態が異なるため感受性を判定するには、組織型ごとにO^6-MGMTのメチル化や発現の違いも検索する必要性があるが、複数の因子を検索することによって良好な治療効果が期待できると考えられる。一方、TMZの効果が乏しい症例では標準治療に加えてO^6-MGMTを枯渇化させるなど、TMZの作期を増強する必要がある。
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