研究概要 |
【目的】本研究課題では,甲状腺がんおよび消化器癌で特異的に生じているmicroRNA(miRNA)の異常を網羅的に解析し,個々のがん細胞において,生物学的特性にどのような影響を与えているのか明らかにする.さらにmiRNAの制御によって,増殖,浸潤・転移などの形質が抑制可能か検証し,治療応用への基礎的検討を開始する. 【本年度の計画】miRNA microarrayを用いた,培養細胞株での網羅的miRNAの発現解析を行い,がん細胞で特異的に発現しているmiRNAを同定する.さらにその中から興味あるmiRNAについて,標的遺伝子の同定を行う.平成19年は,hTERT遺伝子の発現制御に関わるmiRNAに係る解析を行う. 【結果】(1)甲状腺末分化癌では,乳頭癌に比較してmiR-138の発現低下をみとめた.(2)miR-138はhTERTの3'-UTRに結合し蛋白質の翻訳抑制を引き起こした.(3)hTERTを標的としたmiRNAをデータベースで予測し定量を行ったところ,11種類のmiRNAで正常甲状腺に比較して甲状腺末分化癌で発現低下が認められた.(4)miR-138の導入実験ではhTERTの発現低下が抑制でき,reporter assayによるbinding siteの確認も可能であった.(5)悪性黒色腫ではmiR-211がcancer testis antigenのPRAME遺伝子を標的としていた.(6)miR-127はBCL6を標的として細胞増殖に影響を与えていた. 【意義・重要性】miRNAの発現低下はがん細胞の不死化に強く関与する種々のがん関連遺伝子の発現に影響を与えていた.特にBCL6を標的としたmiRNAの発現に関しては興味深く,次の研究展開としてBCL6とヘテロダイマーを形成するNACC1の研究展開につながった.
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