研究概要 |
潰瘍性大腸炎(UC)長期罹患例には癌が高率に発生するが、このUC関連癌では浸潤部で低分化に変化する傾向があり、進展機構が通常のsporadic型大腸癌と異なる可能性が考えられる。浸潤の先端部におけるOccludin,Zo-1,β-cateninと、β-cateninの制御を受けるmatrix metalloproteinase-7(MMP-7)の発現を検討し、浸潤機構に関する相違を検討した。 UC関連癌9例とsporadic型大腸癌59例において、浸潤の先端部におけるtumor cell buddingの程度と、Occludin,Zo-1,β-catenin,MMP-7の発現を免疫染色で検討した。UC関連癌とsporadic型大腸癌の間で、buddingの強さは差が認められなかった。β-cateninの核の陽性率はUC関連癌が左半結腸のsporadic型大腸癌より低かった。MMP-7の発現とbuddingの強さの間には正の相関が認められた。Occludin,Zo-1は腫瘍の分化度が低下すると発現が低下する傾向が見られたが、UC関連癌とsporadic型大腸癌の間には明らかな差が見られなかった。また、β-cateninのexon 3の変異をPCR-direct sequence法で調べたが、変異はsporadicの1例のみであった。UC関連癌とsporadic大腸癌とで、Wnt系の制御に違いがあることが示唆された。
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