研究概要 |
潰瘍性大腸炎(UC)の長期罹患例には大腸癌が高率に発生するが、このUC関連癌では浸潤部で低分化に変化する傾向があり、癌の進展機構が通常のsporadic型大腸癌と異なる可能性が考えられる。前年度は、浸潤の先端部における細胞接着因子Occludin,Zo-1,β-cateninの発現を検討し、さらにβ-cateninの制御を受けるmatrix metalloproteinase-7(MMP7)の発現を検討したが、今年度はさらに、破壊された基底膜産物1aminin5γ2と、細胞表面抗原sialyl LewisXの発現を検討し、β-cateninの変異、tumor cell buddingとともに解析した。UC関連癌9例とsporadic型大腸癌95例とにおいて、分化度を揃えた解析で、sporadic型大腸癌のほうが、laminin5γ2、sialyl LewisXとも浸潤の先端部で高発現を示した。β-cateninのexon3の変異をPCR-direct sequence法で昨年に引き続き解析したが、β-cateninの変異は,両群で明らかな頻度の差は認められなかった。前年度の結果と合わせると、UC関連癌とsporadic型大腸癌の浸潤の先端部において、細胞接着因子の発現の差は明らかなものはないが、浸潤能を示す分子の発現には明らかな差が認められ、両者の浸潤能の機序に違いがあることが示唆された。
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