研究課題/領域番号 |
19590371
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
笠井 謙次 愛知医科大学, 医学部, 准教授 (70242857)
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研究分担者 |
池田 洋 愛知医科大学, 医学部, 教授 (00131219)
稲熊 真悟 愛知医科大学, 医学部, 助教 (80410786)
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キーワード | 膵臓癌 / シグナル伝達 / ヘッジホッグ / 分子病理 / 浸潤 / 転移 |
研究概要 |
もとよりGLI1転写活性化能獲得にはその抑制因子Suppressor-of-Fused(SUFU)から離脱する必要があるとされていたが、その作用機序は不明であった。研究代表者らは膵臓癌で過剰発現しているSILがK-RASシグナル依存性にGLI1のSUFU阻害から離脱し核移行能と転写活性化能を獲得することを明らかにした(KasaiK,et al Cancer Res2008;68:7723-7729)。この成果は単なるGLI1発現量と真のGLI1機能とは相関しないことを示している。昨年度までにGLI1発現状況とヒト膵臓癌細胞株の浸潤能が必ずしも相関しないことを見いだしていたが、再度GLI1機能と浸潤能との関係を調べるため、ヒト膵臓癌細胞株KPINを基にtetracyclinおよびestrogen依存性にGLI1を発現させる細胞株を作成した。その理由はSIL-SUFUなど内在性調節機構を越える量のGLI1蛋白を発現させることによりGLI1機能を顕在化させ浸潤転移への関与を明らかにするためである。この細胞株を用いたcDNA microarrayによる網羅的検索から、GLI1により転写活性化される標的遺伝子として種々のbHLH-ZIP型転写抑制因子の他に gel-forming mucinであるMUC5ACを見いだした。さらにこの細胞株でGLI1発現誘導により上昇したwound healing assayによる細胞移動能は、siRNAによるMUC5AC抑制により有意に減弱した。この結果は転写因子による細胞外環境(粘液基質)の変化(inside-out)が、さらに細胞内環境を変化させる (outside-in)事を示している。現在細胞外MUC5ACがE-cadherinのhomophilic interactionを阻害する可能性について検討を進めている。
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