研究概要 |
1,頚動脈プラークの病理組織学的検討:内膜剥離術で採取された頚動脈プラーク72例(2004-2006年)をホルマリン固定連続切片で光顕的に観察した。責任病変を粥腫と線維成分の割合で粥腫型(プラークに占める粥腫の割合が70%以上のもの,37例),線維型(線維成分が70%以上占めるプラーク,10例),中間型(粥腫型,線維型いずれにも含まれないプラーク,25例)に分けた。症候性プラークの割合は粥腫型53%,線維型45%,中間型40%あった。そのうち潰瘍形成を示すプラークは粥腫型93%,線維型69%,中間型0%であった。2,頚動脈プラークに出現するマクロファージにおけるNa+/Ca2+交換体(NCX)の発現:14例の頚動脈プラークの未固定標本から凍結切片を作製し,責任病変部を免疫組織化学的に観察した。頚動脈プラークでは,粥腫の辺縁と線維性被膜に泡沫化マクロファージが多数集籏していた。CD68陽性のマクロファージの多くがNCX1陽性であったが,NCX2は陰性であった。CD68またはαSMAとNCX1の二重免疫染色を行うと,CD68陽性のマクロファージの細胞質と細胞膜にNCX1が染色された。一方,αSMA陽性の平滑筋細胞はNCX1陰性であった。以上から,ヒトの頚動脈粥状硬化部では,NCX1を発現したマクロファージが粥腫の不安定化を引き起こし,臨床症候の発生に関与している可能性が示唆された。次年度では,さらに不安定プラークがどのようなメカニズムで破裂にいたるかをNCX1陽性マクロファージとの関連から検討する予定である。
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