研究概要 |
1.我が国での後向き多施設共同研究:全国大学病院腎専門施設を中心とした厚生労働科学研究費進行性腎障害に関する調査研究班と全国の国立病院機構腎専門施設を中心とした政策医療腎ネットワークを母体とし、倫理委員会の承諾書に同意した内科・小児科287症例を対象に解析した.臨床情報として腎生検時の蛋白尿と腎機能、そして、その臨床予後と治療情報に着目した。腎病理情報としては、糸球体病変を活動性病変と慢性病変の6項目にわけ、各症例ごとに各病変を持つ糸球体の全糸球体に対する割合を算出してスコアー化した。尿細管・間質・血管病変も定量的に評価した。臨床と病理情報の相関性ならびに各病変の臨床予後への影響を後向きに統計解析し、IgA腎症を構成する病理パラメータの予後予測因子としての役割や治療反応性に関する実証的なデータを出し組織学的重症度分類を完成させた。さらに、蛋白尿と腎機能による臨床病期を組織学的重症度分類に加え、IgA腎症患者の透析導入リスクの層別化分類を提唱した。厚生労働省進行性腎障害調査研究班IgA腎症診療指針第3版として公表される。現在、その再現性や予後予測に関する妥当性に関して前向き研究が進行中である。 2.IgA腎症国際組織分類委員会の成果:我が国で提案されたIgA腎症の病理パラメータが国際組織分類委員会でも採用されることになり、国内、国外とも統一された基準で臨床病理学的検討が可能になった.申請者を含む13人の腎病理医で世界各国の総計265症例臨床病理情報を解析した結果が2008年の第2回国際組織分類委員会で検討された。この証拠に基づいたIgA腎症の組織学的分類が論文として誌上発表される(Kidney Int,2009).IgA腎症の病理診断法の標準化と証拠に基づいた国内ならびに海外での国際組織分類が完成したが、この両者の分類は、それぞれのコホートのエヴィデンスに基づいて作製されたにもかかわらず隔たりがあり、その追試研究が続行中であり、申請者は引き続きその一端を担っている。
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