浸潤性乳管癌における腫瘍内Fibrotic focus(FF、線維化巣)の存在は、浸潤性乳管癌患者の短期・長期予後を考える上で非常に重要な組織形態学的因子であることを後ろ向き研究並びに前向き研究により既に証明した。平成19年度では、FFの存在が浸潤性乳管癌の遠隔臓器(骨、肝、肺)転移との関係に焦点を当て検討を行った。乳癌臓器特異的再発を推測する上で、有用な病理組織学的因子の解明を試みる検討は多く行われてきた。しかし、術後加療、リンパ節転移、pTNM病期等が考慮されておらず、さらに症例数が少ない、後ろ向き研究等より、不十分な研究が殆どである。今回、1044例の浸潤性乳管癌患者を対象とし、術後加療の有無により2群に分け、さらにリンパ節転移(N)の有無、pTNM病期別に層別化し、既知臨床病理学的因子、FFより、骨、肺、肝転移と密接に関連する因子を多変量解析により求めた。その結果、術後加療なし群では、リンパ節転移陰性群、pTNM-I/II群において、FF径、FF線維性状が遠隔臓器転移再発、骨転移再発、肝転移再発と密接に関係していた。術後加療あり群では、リンパ節転移、pTNM病期に関係なく、FF径が遠隔臓器再発、骨転移再発、肝転移再発と密接に関係し、腫瘍壊死、N3(リンパ節転移個数10個以上群)が肺、肝転移と各々有意に相関した。研究の結果、FF性状は術後加療、リンパ節転移、pTNM病期に関係なく、遠隔臓器、特に骨、肝転移再発と密接に関係していることが明らかとなった。
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