研究課題
我々が作製したDrsノックアウト(KO)マウスでは約30%に悪性腫瘍が発生することから、Drsは悪性腫瘍発生に癌抑制遺伝子として働くと考えられる。我々はこれまでにDrsがアポトーシスやオートファジーの制御に関与していることを明らかにして来たが、本年度は、主としてDrs KO細胞を用いて以下のことを明らかにした。1.DrsKO細胞は、グルコース飢餓条件ではアポトーシスを起こすことから、Drsがエネルギー枯渇下での細胞生存に関与していることを見出した。さらに、このアポトーシスはmTOR阻害剤ラパマイシンによって抑制されること、またDrsKO細胞ではWT細胞と異なりグルコース飢餓条件下でもmTOR経路のシグナルが抑制されないことから、DrsはmTOR経路の制御を介してこの過程に関わっていることがわかった。2.DrsKO細胞ではVSVやHSV感染によるウイルス増殖がWT細胞に比べて顕著に促進されることを新たに見い出した。このとき、DrsKO細胞では蛋白合成に制御に関わるS6蛋白のリン酸化が顕著に亢進していた。しかしながら、このウイルス増殖促進はラパマイシンによっては阻害されなかったこと、またmTORの標的であるS6Kや4EBP1蛋白のリン酸化はWTとDrsKO細胞とで違いは認められなかったことから、mTOR以外のシグナル経路がこの現象にかかわっていることが考えられる。以上の結果から、癌抑制蛋白Drsがエネルギー枯渇条件化での細胞生存やウイルス増殖制御にも関与することが明らかになってきた。これらの成果から、Drsの機能解析が癌の悪性化の分子機構だけでなく、もっと広く生体防御機構の解明にも貢献することが期待できる。
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Journal of Cellular Biohemistry 106
ページ: 63-72
Oncology Reports (In press)
Molecular Carcinogenesis (In press)
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