研究概要 |
1.マウス関節滑膜細胞株の樹立とその解析 樹立したマウス関節由来の線維芽細胞様滑膜細胞株における間葉系細胞の系譜特異的遺伝子の発現をRT-PCR法により解析した。野生型、HTLV-1pX-トランスジェニック(pX-Tg)、gp130F759、いずれの由来であってもSca-1,Cadherin-11の発現が認められたことから、間葉系であり滑膜線維芽細胞株であることが確認された。さらにコラーゲン1α及びオステオポンチンも発現していたことから骨芽細胞としての特徴を持つ可能性が示唆された。pX-Tgとgp130F759由来の滑膜細胞株においては、脂肪細胞分化マーカーperoxisome proliferators-activated receptor(PPAR)γの発現は無く、軟骨細胞分化マーカーSox9はごく微量の発現であった。しかし野生型の3つの細胞株の間でPPARγとSox9の発現量に差異が認められた。これらの解析結果より、間葉系マーカー遺伝子の発現の異なるクローンを樹立することができれば、滑膜細胞の系譜、分化段階移行とその制御機構の研究に有用と考えられた。 2.マウス関節滑膜細胞株の血液細胞制御機能の解析 滑膜細胞株の破骨細胞分化支持能はTRAP-GFP-RAW細胞(鳥取大学林眞一博士より恵与)の共培養により評価した。野生型、pX-Tg、gp130F759、pX-Tg/gp130F759の各マウス由来の滑膜細胞株上での共培養2日後に破骨細胞への分化が誘導されたGFP+の細胞の割合は、それぞれ51,75,50,78%であった。野生型骨髄細胞からのコロニー誘導能は野生型とpX-Tgの滑膜細胞株で差を認めなかった。pXの過剰発現が滑膜細胞の破骨細胞分化支持能を亢進させている可能性が示唆された。
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