近年ナノ粒子を用いた物質に暴露する機会が増えているが、その発癌性については一定の見解が得られていない。本研究では酸化銅(CuO)およびtitanium oxide(TiO)のナノ粒子とマイクロ粒子を異なる経路で投与し、ラット肝中期発癌試験法を用いて肝発癌に対する影響を検討した。被験物質はCuOマイクロ粒子(粒径:5μm>)、CuOナノ粒子(33nm)、TiOマイクロ粒子(5μm>)、TiOナノ粒子(80nm)、quartz(4μm>)である。6週齢のF344雄性ラットを6群に分け、全群実験開始時にDENを腹腔内投与し、3週目に2/3肝部分切除を施行した。[実験1]では2週目に1-5群に0.5mg/0.2ml vehicle/ratで被験物質を気管内投与した。[実験2]では2週目から週1回の計6回、10mg/1ml vehicle/ratで強制胃内投与した。[実験3]では2、5週目に2mg/0.2ml vehicle/ratで尾静脈から投与した。8週目に屠殺剖検し肝の前癌病変であるGlutathione S-transferase placental form(GST-P)陽性細胞巣の肝の単位面積あたりの数と面積を解析した。結果、[実験1(気管内投与)]:CuOナノ粒子投与群ではcontrol群と比べGST-P陽性細胞巣の数が有意に増加した。[実験2(強制胃内投与)]:TiOナノ粒子投与群ではcontrol群との比較では有意差がなかったが、TiOマイクロ粒子と比べGST-P陽性細胞巣の数が有意に増加した。[実験3(尾静脈投与)]:CuO、TiOのいずれにおいても、GST-P陽性細胞巣の数および面積について有意な差は認められなかった。 以上より、気管内投与でナノ粒子は肝発癌を促進する可能性が示唆され、ナノサイズの粒径は発癌の重要なリスク要因である可能性が示唆された。
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