研究概要 |
ラット大腸発癌モデルでの前癌病変の作製 5週齢雄F344ラットに20mg/kgのazoxymetahne(AOM)を週1回の2回、皮下投与を行い大腸癌の前癌病変である大腸陰窩変異巣aberrant crypt foci(ACF)とムチン枯渇巣mucin-depleted foci(MDF)及び大腸腫瘍を作製し経時的に観察を行っている。実験開始5週目で屠殺し摘出した大腸はホルマリン固定後、アルシアンブルーpH2.5染色を施行し実態顕微鏡下でMDFを同定し、位置のマッピングを行った。ACFに関してはメチレンブルー染色にて同定しMDF同様にマッピングを行った。現在、大腸のパラフィン包埋連続切片を作製してMDF及びACFにおけるMuc2, Cdx1, 2, Cox-2, iNOSなどの発現を検討中である。 ヒト大腸粘膜におけるMDFの検出 当大学病院にて大腸癌として摘出された31症例の大腸の非腫瘍部粘膜を用いてMDF及びACFの検出を上記ラット大腸発癌モデルで用いた方法で同様に行った。その結果、ヒト大腸正常粘膜においてMDFが存在することが明らかとなった。組織学的検討により、ラット大腸発癌モデルにおけるMDFの組織像と比べ核異型、構造異型等が軽度であったが、杯細胞の著明な減少に加えpaneth細胞の出現に関しては動物モデル同様に認められた。また、MDFの間質へのリンパ球を主体とした炎症細胞の浸潤がラット大腸発癌モデルのMDFに比べ強く認められたことよりサイトカインシグナルの活性化やサイトカインシグナル制御因子の異常が大腸発癌に関与している可能性が考えられた。
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