我々は免疫抑制剤tacrolimus(FK506)が樹状細胞(以下、DC)に発現している内在性MHC class II拘束性マイナー抗原の提示を阻害することを見出し、その分子機構としてFK506の細胞内受容体、FK506binding protein (FKBP)51が関与していることを見出した。本年度は昨年度に引き続き、FKBP51とHSP90とdynein分子の複合体の形成、および、欠損株における抗原の細胞内蓄積を調べた。その結果、FKBP51抗体やHSP90抗体を用いての免疫沈降法では複合体が検出できなかった。そして、昨年度作成したFKBP51欠損COS細胞株における抗原分子の細胞内蓄積に関しても、野生COS細胞株と変化はなく、FKBP51分子そのものが、抗原のプロセッシングに関わっている結果は得られなかった。しかしながら、抗原分子内のあるモチーフ構造がその抗原が提示されるか否かに関与し、エンドソーム内でプロセッシングの有無を左右することを見出した。すなわち、そのモチーフ構造に変異をいれると、抗原提示が減少し、細胞内の抗原タンパク質量の増大がみられた(J. Immunology投稿中)。そしてこれは、野生株、FKBP51欠損株においても変化がないことから、FKBP51分子の抗原提示機構における役割はプロセッシングから提示までの過程で何らかの関与があるのではないかと推測された。
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