癌のテロメア調節機構におけるhnRNP A2/B1アイソフォーム蛋白(A2、B1、B0蛋白)の役割を明らかにすることを目的として、以下の検討をおこなった。 1)同調培養したHeLa細胞からA2、B1蛋白の免疫沈降し、翻訳後修飾とユビキチン化状態を解析した。その結果、両蛋白は細胞周期依存性に修飾されユビキチン化されて分解されるが、A2蛋白とB1蛋白では違いがあることが明らかにした。これはB1蛋白特異的なN末端の12アミノ酸中の3個のリジン残基による違いで、A2蛋白よりB1蛋白の発現が癌で亢進することに関連があると考えた。 2)一本鎖テロメアDNAとの相互作用する蛋白をSouthwestern blotting法にて解析した。テロメラーゼ活性をもつ培養癌細胞において、A2/B1蛋白が一本鎖テロメアDNA結合する主要な核蛋白であることを確認した。また精巣組織より蛋白標本を調整し同様の検討を行っている。さらにgel-retardation分析により、B1蛋白特異的なN末端の12アミノ酸が、一本鎖テロメアDNAと特異的に結合することも明らかにした。 3)ALT機構によりテロメア伸長するモデル癌細胞として、副腎癌由来の細胞株H295Rの性状解析をおこなった。H295R細胞は全くテロメラーゼを発現していないにも関わらず、不規則で長いテロメアを持つことから、ALTのモデル細胞とし有用であることを明らかにした。
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