転移性または切除不能のGastrointestinal stromal tumor(GIST)に対しては、分子標的薬であるイマチニブを投与することが第一の治療選択となっている。イマチニブは比較的副作用が少なく、ほとんどの患者において病勢コントロールを示し、著明な延命効果をもたらす。しかし、イマチニブ治療開始から2〜3年を経過すると、それまで効果を示していた転移病巣内の一部に二次耐性病変が発生することが多い。われわれは以前に、そのような二次耐性病変においてはもともとのc-kit遺伝子変異の他にもう1か所のc-kit遺伝子変異の付加がみられることを報告した。そして今回は多数の二次耐性病変の解析を行うことにより、二次耐性病変として切除された腫瘍の70-80%にc-kit遺伝子の付加変異がみられ、その部位はexon 13とexon 17に同程度に局在することを明らかにした。Exon 13の付加変異は特定の部位(コドン670番)に集中していたが、exon 17の付加変異は様々なタイプを示した。 これらの研究と並行して、GISTに関するいくつかの研究・発表を行った。ヒト多発性GIST家系のモデルマウス(ノックインマウス)を用いて、盲腸のGIST相当腫瘍に対するイマチニブの効果について検討した。また、GISTに対するイマチニブ投与のPhase II国内臨床試験について、著明な効果がみられたことを他の研究者と共同で発表した。さらに、c-kit遺伝子にもPDGFRA遺伝子にも突然変異の見られない若年性GIST症例では、糖鎖修飾の異常によりKITのリン酸化が亢進している可能性について言及した。
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