研究目的 我々が開発したc-kit遺伝子の機能獲得性変異を持つノックインマウス(カハールの介在細胞=(ICC)過形成およびICCのcounterpartであるGISTが発生する)の消化管からICCを単離し、ICCに特異的に発現する分子を調べ、GIST腫瘍発生機構およびICCを介した消化管運動調節機構を明らかにすることを目的としている。 研究成果 c-kit遺伝子のノックインマウスの消化管から高機能セルソーターを用いて回収したICCのcDNAライブラリーを作成し、DNA Tipにより発現遺伝子を調べた結果、ICCに特異的に発現する分子が複数みつかった。その中で、まず、接着分子であるcell adhesion molecule(CADM1)に注目し、解析を進めた。その結果、c-kit遺伝子のノックインマウスにおいて、CADM1はICCだけでなく、GISTにも発現していることが明らかとなった。そこで、ヒトについて検討した結果、免疫染色において、正常消化管のICCにもCADM1が発現していることが分かった。さらに、ヒトの散発性GISTについて調べた結果、小腸GIST(N=5)にCADM1蛋白およびmRNAが発現していたのに対して、胃GIST(N=5)には発現していないことが明らかとなった。以上の結果より、ヒトにおいて胃、小腸GISTでは細胞起源とするICCのタイプが異なっていることが示唆された。ここまでの研究成果を投稿準備中である。現在、CADM1がGISTの腫瘍発生機構に関与しているのか、また、ICCに発現するCADM1が消化管運動調節に関与しているかについて、検討を進めている。
|