【方法】ヒト4型ペルオキシレドキシン(hPRDX4)トランスジェニックマウス(Tg)に、総頚動脈結紮モデルによる動脈硬化病変を作製した。病変部を摘出後、組織学的に内膜肥厚を観察すると同時に内膜と中膜の面積比(IMR)を計測した。またstreptozotocin(STZ)の腹腔内単回投与(150mg/kg)による1型糖尿病モデルを別に作製し、免疫染色も含めた膵の病理組織学的観察および糖負荷テスト等を行った。 【結果】結紮モデルにおいては、3週間後のTgではwild typeマウス(WT)に比較して、IMRが有意に減少したが、予測したほどの劇的な変化は認められなかった。そこでwestern blottingで、Tgにて特異的にhPRDX4を発現していた膵に着目し、1型糖尿病モデルを作製した。2週間後のWTではTgに比較して、インスリン陽性細胞(β-cell)を含むラ氏島の面積・細胞数ともに著明に減少しており、ラ氏島におけるリンパ球主体の炎症細胞浸潤およびアポトーシスを呈する細胞数は有意に増加していた。これらの結果を裏付けるように、WTではTgに比較して、糖負荷テストにおいて有意に血糖値の正常化が延長した。 【考察および今後の展望】PRDX4は、特に1型糖尿病を誘発する炎症機転において、膵β-cellsに対して保護・防御的に働くことが示唆された。今後、様々な炎症性サイトカインまたはレセプターなどの遺伝子発現を、膵から抽出したmRNAより作製したcDNAを用いて、real-time RT PCRにて網羅的に確認しPRDX4を中心とした炎症カスケードの解明をしていきたいと考えている。また同様に炎症と密接に関わる動脈硬化に関しては、TgにApoEノックアウトマウスを交配させhPRDX4+/+/ApoE-/-マウスを作製して、高脂血症モデルを追加、施行すべく繁殖させている途上である。
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