研究概要 |
【目的・方法】Peroxiredoxin(PRDX)4は、抗酸化作用を有する新しい蛋白群の一つである。我々はヒトhPRDX4トランスジェニックマウス(Tg)を作製し、諸臓器の蛋白発現を調べたところ、膵に高発現していることを確認した。そこでPRDX4が生体内において保護的に機能していることを、streptozotocinの腹腔内単回大量投与(150mg/kg,SHDS)による1型糖尿病モデル(T1DM)を用いて検討した。適宜、血糖値を測定し、解剖前には糖負荷テスト等を施行した。SHDS後1,2週に、それぞれTgとwild typeマウス(WT)の膵を摘出し、組織学的・免疫組織学的に比較検討した。さらにmRNAおよび蛋白を抽出し、PRDXs、サイトカイン等の発現レベルを比較した。【結果】SHDS後、TgはWTに比較して、明らかに高血糖・低インスリン血症が抑えられ、糖負荷テストにおいて有意に血糖値の正常化が短縮した。1週後の膵ラ氏島はTg、WT共に面積が著明に減少していたが、2週後のTgでは、WTに比較してインスリン陽性細胞(β-cell)を含むラ氏島の面積・細胞数が有意に増加しており、ラ氏島におけるリンパ球浸潤は減少し、アポトーシスを示すTUNEL陽性細胞も減少、逆に増殖を示すMIB-1陽性細胞は増加していた。さらに、細胞外基質分解酵素(MMP)を含む炎症性サイトカインや、マウスmPRDXsの発現が、Tgにおいて有意に抑制されていた。【考察および今後の展望】T1DMを誘発・進展させる酸化ストレス・炎症機転において、PRDX4は膵β-cellに対して保護・防御的に作用していることが示唆された。さらにMMPsや他のPRDXsとの間に、PRDX4を中心とした炎症カスケードが存在することを窺わせた。今後、高脂血症モデルでの動脈硬化巣における、PRDX4の役割を解明していく。 Revision entitled 'Overexpression of PRDX4 protects against high-dose streptozotocin-induced diabetes by suppressing oxidative stress and cytokine in Transgenic mice' submitted for the Antioxidant & Redox Signaling.
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