研究概要 |
ユビキチン化は、プロテアーゼ複合体であるプロテアソームで行われているタンパク質の分解に必要な修飾であり、不要タンパク質の分解をはじめ、遺伝子転写、シグナル伝達、メンブレントラフィック等の様々な生命現象の基本機構として位置づけられてきている。その中心的役割を果たしているのがE3ユビキチンリガーゼ(E3)である。E3には、E2結合ドメインの種類によりRING型,HECT型,U-box型の3種類が見いだされており、RING variantドメインをもつ新たな膜結合型E3ファミリー、MIR(Modulator of Immune Recognition)ファミリーが発見された。この分子群はウイルス分子群と哺乳類分子群(MARCHファミリー)の二つに大別される。 今回、E3の一つであるMARCH Iが、B細胞内MHC IIの翻訳後調節に重要であることを明らかにした。MARCH I mRNAは、B細胞に多く発現しており、MARCH Iノックアウトマウス(KO)B細胞を用いたFACS解析から細胞表面上のMHC II分子の発現はKOマウスB細胞で上昇していた。このMHC II分子のタンパク量は上昇しているが、mRNAレベルでは同じことから、翻訳後レベルでMHC II分子量の増加が引き起こされていることが判った。また、MARCH I KOマウスB細胞では細胞表面上MHC IIの半減期が延長しており、コントロールマウスでは観察されるMHC II のユビキチン化が完全に消失していた。加えて、コントロールに比べ、MARCH I KOマウスB細胞では多くの外来抗原を発現でき得、外来抗原提示能も上昇していた。これらの結果は、B細胞内MHC II β鎖がMARCH Iによりユビキチン化されることにより発現調節されていることを示している。
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