卵白アルブミンOVA遺伝子を導入したB6マウス由来胸腺腫E.G7-OVA細胞に、さらにシアル酸転移酵素ST6GalNAc I遺伝子を導入して作製したE.G7-OVA-ST(+)細胞、不活性型フォームであるST6GalNAc I-S遺伝子を導入して作製したE.G7-OVA-(ST-)細胞、そしてコントロールとなるE.G7-OVA-mock細胞を作製してB6マウスに接種し、誘導されるOVA特異的な細胞障害性T細胞の増加をH-2K^b/OVA_<257-264>テトラマー染色および、IFNγ ELISpotアッセイで評価した。E.G7-OVA-(ST-)細胞もしくはE.G7-OVA-mock細胞を接種したマウスに比較して、STn抗原陽性となるE.G7-OVA-ST(+)細胞を接種したマウスでは、抗原特異的にIFNγを産生するT細胞数が有為に減少しており、細胞障害性T細胞の誘導効率も有為に抑制されていた。なお、E.G7-OVA-ST(+)細胞を接種したマウスは、E.G7-OVA-ST(-)細胞を接種したマウスよりも早く死亡した。 この現象をモデル化するため、OVAをモデル抗原としてシアリルラクトース被覆リポソーム(SIA-Liposome)とPSリポソーム(PS-Liposome)、そしてマンノース被覆リポソームを用いて免疫応答の比較解析を行ったところ、SIA-Liposome投与マウスでは高いIL-10/INFγ産生細胞数比を示し、封入抗原特異的なTh1免疫応答の抑制が観察された。 これら一連の検討によって、がんの進展に伴って出現してくるSTn抗原などのシアリル化糖鎖抗原は、その発現によって宿主免疫を抑制する事に寄与していることが示唆された。
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