本年度の研究目的は、有鉤嚢虫カテプシンLのin situにおける発現様態を免疫組織化学的に解析し、カテプシンLの機能を調べることである。嚢虫は肥満性糖尿病性免疫不全(NOD/Shi-scid)マウスを用いて実験的に発育させたものを用いた。マウス腹腔より得た嚢虫は凍結切片と4%パラホルムアルデヒド(PFA)固定パラフィン切片を作製した。スライドグラス上の凍結切片、PFA固定パラフィン切片とも抗カテプシンLペプチド抗体、ビオチン標識抗ウサギIgG抗体を順次反応させ、さらに、ジアミノベンチジンを用いた発色反応、最後にヘマトキシリンでカウンター染色を行い、顕微鏡観察を行った。その結果、カテプシンLに対する強いシグナルは頭節にある吸盤の筋組織と嚢胞壁で検出され、また弱いシグナルは柔組織の一部でも観察された。嚢虫と同じ扁形動物に属する吸虫では、カテプシンLは腸管上皮細胞内に局在し、摂取した宿主タンパク質を限定分解することが明らかになっているが、嚢虫では腸管を欠き、栄養源は体表面から吸収されることを考慮すると、本研究によって得られた嚢虫のカテプシンLはin situにおいて体表面で発現している事実は、カテプシンLが体表面、あるいは細胞外に分泌され宿主タンパク質を分解していることを強く示唆するものである。また、嚢虫がヒトの脳に寄生した場合、嚢虫壁が分解されて死滅する際、強い炎症を招き、これが種々の臨床症状となって現れるが、カテプシンLと病態との関連性の観点からさらなる研究の必要性があると考えられた。
|