研究概要 |
細胞内寄生原虫のトキソプラズマ感染においては、感染感受性臓器においても炎症現場や壊死巣にトキソプラズマが同定されない場合が多く、急増虫体の増殖や細胞傷害性T細胞による感染細胞の破壊は解明されているものの、その病原性・病態形成機序の詳細は未解明である。我々は急増虫体に特異的に発現されるストレス蛋白HSP70(T.g.HSP70)をクローニングし、その発現が宿主の防御免疫能を低下させ死に導く危険シグナルであることを解析してT.g.HSP70が宿主防御免疫を抑制する重要な強毒性分子であることを明らかにしてきたが、宿主の感染死メカニズムについては未解明であった。 本研究ではT.g.HSP70により感染宿主がアナフィラキシー死に陥ることを発見し、トキソプラズマ感染死を分子レベルで始めて解明した。このアナフィラキシーは抗体によるI型アレルギーではなく、血小板活性化因子(PAF)を介して惹起される汎血管内凝固機転によることを明らかにした。さらに、アナフィラキシー反応がIFN-γ欠損マウスでは起こらないことを見出し、以下の解析を行った。 (1)IFN-Yγ移入実験によりT.g.HSP70によるアナフィラキシー反応がIFN-γ依存性であることを証明し、PAF発現に対するIFN-γの機能を明らかにした。 (2)IFN-γ欠損マウスへの野生株感染マウス脾臓細胞の移入実験により、アナフィラキシー反応のエフェクター細胞を解析し、CD11b^+CD11c^+細胞が直接PAF発現に関わる最も重要なエフェクターであること、CD4^+、CD8^+細胞もIFN-γ産生によりCD11b^+CD11c^+のPAF発現を誘導する間接的エフェクターであることを明らかにした。 (3)自然免疫担当分子であるTLRと下流関連シグナル分子の解析を行い、TLR4/MyD88シグナル、MAPKinaseがT.g.HSP70によるアナフィラキシーに関与することを明らかにした。 以上の結果を国際誌(Int.Immunol.,Microbiol.Immunol)に発表した。
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