マクロファージマンノースレセプターMRは因性、外因性分子のいずれにも和性を示すバイファンクショナルなレクチンである。我々は、マウスC57/B6系統を用い、MRがマラリアの重症化に関与していることを見出した。本研究は、MRによるマラリアの重症化機構について解析するために、MRが感染赤血球抽出物と結合するかどうかを解析し、結合するリガンド分子の同定を目指した。 本研究では、ブタ胎盤より精製したブタMRを用いた。ブタMRはPlasmodium berghei ANKAに感染したマウスの感染赤血球抽出物と濃度依存的に結合した。一方、非感染赤血球抽出物はブタMRと結合しなかった。マンノースを特異的に認識するレクチン(コンカナバリンA)を用い、感染赤血球抽出物にはコンカナバリンAと結合する成分が含まれており、その結合はマンナンによって阻害されることを見出した。レクチンブロッドによって、感染赤血球中の分子量約34kDaおよび25kDaのタンパク質がコンカナバリンAと結合することを見出した。これらより、マラリア感染赤血球抽出物にはマンノースを介してMRと結合するリガンド分子が含まれていることが明らかとなった。 MRのリガンド分子の同定にまでは至らなかったが、マラリア原虫は哺乳類とは構造が異なるglycosylphosphatidylinositol(GPI)アンカーを合成し、感染赤血球膜に発現することが知られている。GPIはマウスにおいてプロ炎症性サイトカインの発現を誘導し、急性マラリアの症状を引き起こすことが報告されている。GPIにはマンノースが含まれていることから、GPIがMRのリガンドとして作用し、マラリアを重症化する可能性が考えられる。 以上の結果より、感染赤血球あるいはマラリア原虫とMRの結合を阻害することによって、マラリアの重症化を抑制できると考えられる。
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