研究概要 |
我々は、これまでにマンソン裂頭条虫のプレロセルコイド(幼虫)の分泌物質中の免疫抑制因子(ES90)を精製し、この因子がToll-like receptor(TLR)4のリガンドであるlipopolysaccharide(LPS)活性化マクロファージの遺伝子発現および破骨細胞形成を抑制することを見い出した。そして、ES90のN末端と内部のアミノ酸配列の一部を決定した。 そして、このアミノ酸配列を基にしたdegeneratePCRプライマーを作成し、幼虫由来のmRNAからRT-PCR法によってcDNA断片が得られた。このcDNAの塩基配列は、374bpで、プライマーのアミノ酸配列と一致した。このcDNAの塩基配列の解析結果から、2種類の塩基配列のパターンが確認された。アミノ酸に変換すると124アミノ酸中15アミノ酸で変異がみられ、2つのisoformの存在が示唆された。そして、これらのDNA情報、アミノ酸情報について検索したが、相同性の高いものはいずれも報告されておらず、新規の免疫抑制因子と推察された。最近得られた2種類のisoformの免疫抑制因子ES90のcDNA情報を基にして、3'RACE法および5'RACE法を用いて全長のcDNAの塩基配列を決定し、クローニングと遺伝子組換えタンパク作製の準備ができた。 また、マンソン裂頭条虫の幼虫の分泌因子中から精製していた免疫抑制因子ES130によるLPS活性化マクロファージのRANTES(CCL5),MIP-2(CXCL2),IP-10(CXCL10)ケモカインの遺伝子発現抑制および産生抑制について論文にまとめて発表した。これらの3つのケモカインは、ES130によって異なる機序で産生が抑制されていることが推察された。
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