本研究では、赤血球侵入型マラリア原虫の細胞内小器官ロプトリーへの輸送シグナルとなるシグナル配列を明らかにし、輸送に関与するタンパク質群および輸送されるタンパク質群を網羅的に明らかにすることを目的とした。メロゾイト期に転写活性を持つ複数のタンパク質のシグナル配列とGFPを融合して発現するコンストラクトを初年度に作成したが発現が確認できなかったため、本年度はプロモーター領域とシグナル配列の間にゲートウェイ組換え部位配列を入れるように、コンストラクト群を新しくデザインして作り直した。各コンストラクトを遺伝子導入し、遺伝子組換え原虫を新しく作り直し、シグナル配列とロプドリーへの輸送の関係を調べるための詳細な局在解析を行う準備を整えた。また、ロプトリータンパク質RhopH2のプロモーターとシグナル配列と融合したタグタンパク質(lnvitrogen社のLumioタグとGFP)を発現する熱帯熱マラリア原虫を作成した。この原虫からタンパク質を抽出しカラムを作成し、タグタンパク質に結合するマラリア分子(輸送に関与する分子候補)を精製する準備を整えた。さらに、研究の過程で細胞内小器官マイクロネームに局在するEBLの輸送シグナルと考えられる領域のCys残基が、ネズミマラリア原虫P. yoelii17X弱毒株では、他のEBL相同体と同様に保存されているが、17XL強毒株ではArg残基に置換しており、また、17XL強毒株でとEBLはマイクロネームに局在していすいことを見出したため、Cys/Arg置換がEBLの異なる局在の原因かどうかを遺伝子改変手法により検討したところ、Cys/Argの置換がEBLの異なる局在の原因であることが確認できた。 このアミノ酸置換により侵入する赤血球のタイプも変化し、その結果、病原性も劇的に変化した。以上より、EBLを標的とするワクチン開発に対する重要な基盤情報を提供した。
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