研究課題
研究代表者は、マラリアワクチン開発の基礎的研究として、マラリア原虫に対する宿主の免疫応答、特に感染防御と病態形成機構における自然免疫系が果たす役割について解析を進めてきた。本研究では、自然免疫担当細胞であるMΦが産生する新規アポトーシス抑制因子(AIM)を欠損するマウス(AIM^<-/->)を用い、マラリア原虫感染におけるNKT細胞及びγδT細胞の活性化機能制御とMΦの関係を明らかにし、新しい視点での感染防御機構だけでなく病態形成の機序についても検討を加えている。本年度は、現在までの研究成果に基づき、parasitemiaがピークの達するまでの感染前期と原虫が排除される感染後期では自然免疫応答に質的変動が生じるとの観点から解析を行った。AIM^<-/->マウスでは感染後期にNKT細胞と共にγδT細胞が増加し、肝臓と脾臓において腸管上皮内に局在するVγ7細胞の顕著な増加が認められことを、Flowcytometory法からも明らかにできた。また、AIM^<-/->マウスでは感染前期より特異抗体が誘導され、感染後期では高い抗体価が検出されたことから、NKT細胞とγδT細胞の活性化が獲得免疫の誘導へ強い影響をもたらすことが明らかになった。一方、肝臓と脾臓のMΦはAIM^<-/->マウスで減少していたが、MΦのCD36発現は亢進する傾向にあり、貪食能の経時的変動では感染初期より明らかにAIM^<-/->マウスで亢進していた。従って、AIM^<-/->マウスでは感染初期のMΦの貪食能亢進が原虫排除に大きく貢献しており、しかも原虫を貪食したMΦは速やかにアポトーシスにおちいることで肝傷害を軽減していることが強く示唆された。すなわち、マラリアをはじめとする感染症においては、MΦの機能としての貪食作用による病原体の排除やそれに伴う炎症反応の惹起にAIMが関与しており、その機能制御が予防・治療に有効である可能性が示唆された。
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Immunology 122
ページ: 514-521
http://www.cc.u-ryukyu.ac.jp/~comb/
http://w3.u-ryukyu.ac.jp/immunobiology/index.html