研究代表者は、マラリアワクチン開発の基礎的研究として、マラリア原虫に対する宿主の免疫応答、特に感染防御と病態形成機構における自然免疫系が果たす役割について解析を進めてきた。本研究では、自然免疫担当細胞であるMΦが産生する新規アポトーシス抑制因子(AIM)を欠損するマウス(AIM^<-/->)を用い、ネズミマラリア原虫に対する感染防御と病態形成機構の解析を行った。 本年度は、感染前期と原虫が排除される感染後期では自然免疫を担うMΦの機能が変化するとの仮説を立て、以下の結果を得た。(1)感染AIM^<-/->マウスの肝MΦは感染極期から後期にかけて減少していたが、MΦの貪食能は感染初期より亢進していた。これらの結果から、AIM^<-/->マウスではMΦの機能亢進、すなわち、感染赤血球の貪食能亢進と共に自らのアポトーシスを誘導し、その後の病態の沈静化に関与するものと推察された(2)マラリア感染における組織傷害を含むマラリア重症度とその回復は、炎症性サイトカイン(TNFα)と抗炎症性サイトカイン(IL-10、TGF-β)産性バランスに左右されることから、これらのサイトカイン産性能を解析した。AIM^<-/->マウスでは野生型マウスとは異なり、感染後期においてはTNFαとIL-10及びTGF-β産性バランスに関係なく原虫の排除を亢進させていることが明らかとなった。以上の結果から、AIM^<-/->マウスでは感染初期においてIFN-γ非依存性にMΦの貪食能が亢進し、その結果、原虫の排除がなされており、しかも原虫を貪食したMΦは速やかにアポトーシスにおちいることで感染による組織障害を軽減していることが強く示唆された。一方、感染後期においては、野生型マウスで見られるTNFα産生の亢進をIL-10及びTGF-β産性が抑制する制御機構が働かず、これらのサイトカイン産生レベルが低下していることから、感染により誘導されるNKT細胞やγδT細胞がその制御に関与するものと考えられた。
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