私達は、LipopolysaccharideとD-galactosamineの混液(LPS/GalN)投与による急性肝障害に対するマンソン住血吸虫(Sm)感染マウスおよび凝固活性化因子(CILIP)投与マウスの抵抗性機構を解析し、以下の成績を得た。(1)Sm感染およびCILIP投与マウスは、LPS/GalN投与によって血清中炎症性サイトカイン量が対照群と同程度以上に増加していたが、肝臓のアポトーシス陽性細胞数やCaspase3活性は低値を示し、肝病変も殆ど観察されなかった。(2)LPS/GalN投与後経時的に肝臓内アポトーシス関連遺伝子発現を解析し、感染マウスではFas、FasL、Bcl-2、iNOS、HO-1、HSP-70mRNA発現の増加、さらにはiNOS、HO-1、HSP-70蛋白発現が著しく増加していた。一方、CILIP投与マウスの肝内iNOS mRNA発現は若干増加していたが、HO-1、HSP-70発現は対照と差がなかった。そこで、各種阻害剤を使った解析を行い、唯一aminoguanidine(iNOS阻害剤)がSm感染マウスの抵抗性を著しく低下させたが、CIHP投与マウスには無効果であった。(3)培養細胞のアポトーシス誘導系(Wehi/αIgM抗体、Jurkat/staurosporin、293/H_2O_2)にCILIPを添加すると、その添加量に依存した生細胞数の増加が観察された。しかし、この効果がアポトーシス誘導機構の阻害によるかは不明である。 今年度の解析から、Sm感染およびCILIP投与マウスのLPS/GalNに対する抵抗性は、アポトーシス誘導刺激に対する肝細胞の抵抗性増加によるものであり、慢性Sm感染マウスにおいてはiNOSの誘導がその抵抗性に深く関わっていると推定された。しかし、CILIP投与マウスの抵抗性機構については特定には至らなかった。
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