私達は、LipopolysaccharideとD-galactosamineの混液(LPS/GalN)投与による劇症肝炎に対するマンソン住血吸虫(Sm)感染マウスおよび凝固活性化因子(CILIP)投与マウスの抵抗性機構を解析し、以下の成績を得た。 (1)マウス腹腔内マクロファージ(Mf)、骨髄細胞から誘導したMf(BMMf)や樹状細胞(BMDC)のin vitro培養系に各種TLRリガンドやサイトカインを添加すると、これら細胞のmicrosomal画分には強い凝固活性化活性が誘導されるが、LPS/GalNによる劇症肝炎に対する救命効果はみられなかった。一方、マンソン住血吸虫成虫、あるいは虫卵の粗抽出液、あるいはこれらで刺激した細胞のmicrosomal画分には凝固活性化活性はみられなかったが、劇症肝炎に対する救命効果は認められた。 (2)救命に働いているGILIP構成分子を特定するため、CILIPの救命効果を特異的に阻害するモノクロナル抗体のスクリーニングを行ったが(23種類)、CILIPの救命効果を阻止できる抗体は検出できなかった。また、CILIPの凝固活性化活性を中和し得るモノクロナル抗体もまたCILIPの劇症肝炎に対する救命効果を抑制することはできなかった。 (3)抗IgM抗体によるWehi231細胞のアポトーシス誘導系にCILIPを添加すると、その添加量に依存した生細胞数の増加(アポトーシス陽性細胞数の減少)が観察され、CILIPがアポトーシス誘導シグナルを阻止しうる可能性が示唆されたが、その機構の特定には至らなかった。 今年度の解析から、CILIPによる救命機構を特定することはできなかったが、CILIPの劇症肝炎に対する救命効果がその凝固活性化活性に依存したものでないこと、さらには住血吸虫成虫、あるいは虫卵由来分子による救命効果が明らかとなったことは意義ある知見と考えられた。
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