ホレリア属細菌はマダニ媒介性のスピロヘータである。ボレリアは吸血によってマダニ中腸へ取り込まれるが、その後、マダニ中腸に生着、マダニ体腔内循環を経て唾液腺に侵入することでその伝播サイクルを成立させている。とくに経ステージ感染に必須と考えられる、マダニ中腸上皮細胞への接着と、宿主へのエントリーの直前段階である吸血時のマダニ唾液腺へのボレリア侵入はその伝播サイクルを成立させる上で極めて重要なステップであるが、その現象を説明するための分子生物学的解析はほとんど行われていない。本研究ではそれぞれのステップに必須なボレリア因子の同定とその機能解析を最終目的として、以下研究成果を得た。 1.シュルッェマダニ唾液腺へのボレリア接着因子として、国内分離のライム病病原体であるボレリア・ガリニゲノムから機能未同定の遺伝子を複数検出した。表層抗原であるBB0616ホモログは、マダニ唾液腺への接着に関与していると思われる。一方、その機能ドメイン、接着リガンドなどは未同定である。 2.国内分離ボレリアのマダニ中腸への接着性についても検討を行った。ボレリアの中腸組織への接着は、未吸血マダニ中腸組織で見出された。また、接着阻害実験に用いた細胞マトリックスの一部は、その接着を阻害したことから、これら宿主分子に対する接着性がボレリアの中腸生着に関与している可能性が示された。現在、これらボレリアの接着因子の同定を試みている。
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