研究概要 |
病原性Nocardiaの62種の中の主な菌種(56種)の基準種を用いて、必須遺伝子であるgyrBの解析情報に基づく新しい分類体系の確立を目的に研究を進めた。その結果、Nocardiaの56菌種内のgyrB遺伝子情報の相同性は、82.4〜99.9%であった。また解析した約1,200塩基数の中での違いは、2〜270塩基に相当することが明らかになった。gyrB情報に基づくNocardiaの系統学的な位置関係を16SrRNA遺伝子と比較した場合、gyrB遺伝子を用いた場合の系統樹は、16SrRNA遺伝子情報とほぼ同様な系統関係を示すことを確認することができた。さらに、gyrB遺伝子情報に基づく56菌種の系統的な位置関係の解像度は、16SrRNAの遺伝子に比べて(16SrRNAでは、94.4-100%であった)、3.6倍の差を示し、gyrB遺伝子が種の同定や分類において明らかに優れていることを証明することができた。gyrB遺伝子の相同性について、56菌種のそれぞれの菌種の中で、相互の相同性の関係が93.5%以上を同一菌種とした場合では、56菌種は、36菌種がそれぞれ2〜7菌種を含む13クラスターにわけられること、また残りの19菌種は、それぞれ一菌種からなるクラスターに分けることができた。 病原性放線菌の中で、Nocardiaと同じぐミコール酸を含む放線菌は8菌属があるがgyrB geneの特定の領域の配列を細いることにより、容易に区別する方法を見出し報告することができた。また、これらの情報に基づく簡便な鑑別法を考案して報告した。 また、Nocardiaと同様に、患者から多く分離される病原性の放線菌GordoniaについてもgyrB遺伝子とさらにsecA1遺伝子配列情報が、本菌種の鑑別に極めて有用であることを明らかにすることができた。
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