研究概要 |
ブドウ球菌食中毒症は年間多数の患者が報告される重要な疾患であり、主症状が激しい嘔吐であるという特徴を持つにもかかわらず、その病態の解明はほとんど進んでいない。平成20年度の研究を通じて、フィールド電気刺激(frequency : 10-500Hz, duration : 0.5msec, intensity : 10-40volt, 10-100tr4ains)に対するBALBl/cマウスの小腸の張力応答は多相性を示すこと、全ての小腸領域において刺激開始後約1秒後にpeakを持つ早い収縮応答とそれに続く短い弛緩の後刺激開始後約2.5秒後にpeakを持つ第二の収縮応答が見られることを見出した。またブドウ球菌エンテロトキシンA(1μg/ml)を組織液に添加すると第二の収縮応答の張力に著しい増大が認められた。この第二収縮応答は、NOS阻害剤であるL-NNA処理によって増大し、reserpineによって抑制される成分であることから、モノアミン系の興奮性伝達物質によって惹起されているものと推察された。これらの結果を基に、平成21年度においては毒素濃度とフィールド電気刺激によって誘発される小腸張力増大との間における相関関係について解析を進めたが、毒素用量依存性は無いことが分かった。更に、Auerbach神経叢の神経細胞間情報伝達におよぼすブドウ球菌エンテロトキシンの影響を検討したが、神経叢での神経回路が複雑すぎて一定のパターンを得ることができなかった。そこで平成22年度においては、より単純な中枢神経系パターンジェネレーターを用いてブドウ球菌エンテロトキシンによる嘔吐反応を誘発する神経機構を解析する予定である。
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