研究概要 |
本研究では、リンパ球への肺炎クラミジアの感染モデルや培養細胞株を用いたマクロファージへの感染モデルを用い、肺炎クラミジア感染に伴う宿主細胞のシグナル分子やアポトーシスに関与する分子の分子会合の有無やリン酸化、切断、ユビキチン化およびその他の修飾の有無,量的な変化,マイクロRNA(miRNA)発現の変動などの点に着目しながら、生化学的、分子生物学的手法を用いアポトーシスや細胞周期の制御におけるクラミジア感染の影響について解明することを目的としている.本年度はクラミジア感染による宿主細胞のmiRNAの発現量の測定、また、細胞周期の調節についてはクラミジア感染により細胞増殖がどのように調節されるかについて,細胞内情報伝達系への関与に着目し解析した.その結果、miRNAの発現の解析においてはマイクログリア細胞株への肺炎クラミジア感染により,miRNA-214の発現量の増加が観察された.その他検討したmiRNAの発現量には変動が無かったことからmiRNA-214の発現変動は肺炎クラミジア感染に特異的である可能性が示唆された.また,このmiRNAの変動はマイクログリア細胞株特異的に観察され,miRNA発現量の肺炎クラミジア感染による調節には細胞取得異性があるらしいことが示唆された.肺炎クラミジア感染による細胞増殖の調節においては,MPAK経路,PKA経路,およびmTOR経路の関与について検討した.それぞれの経路について,経路の活性化剤もしくは阻害剤を用い,これら薬剤の存在下における肺炎クラミジア感染の影響を見た.その結果MAPK経路の関与は否定されたものの,PKA経路あるいはmTOR経路はその関与を示唆するような結果が得られた.特にmTOR経路の阻害により,肺炎クラミジア感染と同様の増殖抑制効果,cyclinD3の発現抑制効果が見られることから,mTOR経路の関与が最も疑われた.さらに研究を続けこれら経路と肺炎クラミジア感染の関係を明らかにしたい.
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