研究概要 |
A群連鎖球菌は、古くから咽頭炎、猩紅熱などの原因菌として知られていたが、近年劇症型感染症の起因菌となる例が報告されるようになった。この病気は、全身の様々な臓器の重篤な病態を引き起こすが、中でも筋肉が急に腫れ数時間から数日のうちにどんどん壊死していく壊死性筋膜炎は典型的な症状である。NgaはA群連鎖球菌によって菌体外に分泌されるタンパク質(約450アミノ酸)で、培養細胞に対し障害活性を示す。この障害活性にはNgaが持つNADase活性が重要な働きをしていると考えられている。そこで、本研究では劇症型感染症マウスモデルを用いてNgaタンパク質の劇症型感染症との因果関係についての解析を行った。 【方法】劇症型感染症患者由来の臨床分離株8株の培養上清のNADase活性を測定した。nga遺伝子欠損株を作成した。nga遺伝子をコードする3種類のプラスミド, pLZN2, pLZNRBS, pLZNRBSII2を作成した(それぞれコードされているnga遺伝子開始コドン上流領域の長さが異なる;0,16and27bp)。菌液を3週齢のマウスの左わき腹に皮下投与し、1週間観察した。 【結果と考察】NADaseの活性は、3-5unitと50-100unitの2つのグループに分かれた。最も高い致死率を示したCR01株(100%=12/12)と2番目に高い致死率を示したGTO1株(80%=12/15)は何れも高NADase活性(114.3and57.0unit)を示した。GT01△nga/pLZ-km2(control vector)、GT01△nga/pLZN2, GT01△nga/pLZNRBS, GT01△nga/pRBSII2のNADase活性はそれぞれ、0.5,1.3,1.8,4.6unitであった。マウスに対する病原性を致死率と体重の増加率で測定した結果NADase活性依存的に菌の病原性が増加した。
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