研究概要 |
真菌は呼吸器系への侵入、感染によりARDS、アレルギー性気管支炎の原因となることが知られている。また、表在性真菌のアトピー性皮膚炎の関与を示唆することが報告されるなど真菌がアレルギー症状の誘導に関わる多くの証拠が示されている。これらの現象に関わるアレルゲンとなるタンパク質成分などは明らかになっているものは多いが、非タンパク質性の真菌アレルゲン成分については殆ど明確にされていない。これまでの解析で真菌の長鎖(1→6)-分岐(1→3)-β一D-グルカンがTh2タイプの免疫応答を惹起することが分かっている。そこで本年度の研究ではこれらのβ-グルカン(BG)の動物実験モデルにおけるアトピー性皮膚炎発症に及ぼす影響を確認すると共に、その発症機序の検討としてBG受容体機能の解析を行った。NC/Ngaマウスモデルにおいてダニ抗原とカンジダ由来のBGを同時塗布するとダニ抗原単独よりも早期に耳介肥厚が観察され、肥厚の程度はBGによる悪化が観察された。また、耳介組織切片の鏡検像からも真皮のみならず表皮層の肥厚が顕著であることが明らかとなった。同時に採取した末梢血中のIgE値も有意な上昇を示し、頚部リンパ節由来のリンパ球培養中のIL-4値もBG併用により有意に高かった。さらにBG受容体としての関与が推測されるdectin-1のNF-κB活性化に関わるシグナル伝達機構について観察したところ、真菌成分のTLR2リガンドを除去してもdectin-1はsyk,Bcl10,CARD9のチロシンリン酸化酵素やアダプター分子の存在下でBGによるNF-κB活性化を誘導できることが明らかとなった。以上の成果より、BGはアトピー性皮膚炎の誘導、dectin-1を介した炎症性シグナルの誘導を惹起することが明らかとなった。
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