真菌は呼吸器系への侵入、感染によりARDS、アレルギー性気管支炎の原因となることが知られている。また、表在性真菌のアトピー性皮膚炎の関与を示唆することが報告されるなど真菌がアレルギー症状の誘導に関わる多くの証拠が示されている。これらの現象に関わるアレルゲンとなるタンパク質成分などは明らかになっているものは多いが、非タンパク質性の真菌アレルゲン成分については殆ど明確にされていない。これまでの解析で真菌の長鎖(1→6)-分岐(1→3)-β-D-グルカンがTh2タイプの免疫応答を惹起することが分かっている。そこで本年度の研究ではこれらのβ-グルカン(BG)の動物実験モデルにおけるハプテン誘導型皮膚炎発症に及ぼす影響を確認すると共に、その発症機序の検討としてBG受容体機能の解析を行った。C57BL/6マウスモデルにおいてTNCBとカンジダ由来のBGを同時塗布するとTNCB単独処置に比べ、塗布開始後16日以降の後期で、耳介肥厚悪化が観察された。また、血清中のTNP特異的IgE値もBG併用により有意な上昇を示し、頚部リンパ節由来のリンパ球培養中のIL-4値もBG併用により有意に高かった。また、耳介組織抽出物中のIFN-γ、IL-4産生もBG併用によってさらに高まることが明らかとなった。BG受容体としての関与が推測されるdectin-1のKOマウスでカンジダ由来のBG反応性について観察したところ、BGによる炎症性サイトカインの産生やNO産生が完全に消失した。以上の成果より、BGはアトピー性皮膚炎の誘導、dectin-1を介した炎症性シグナルの誘導を惹起することが明らかとなった。
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