研究概要 |
死亡例が毎年散発する日本紅斑熱には,迅速で確実な診断法の確立が求められる。我々はこれまで,日本紅斑熱を疑う患者の刺し口や発疹のホルマリン固定パラフィン皮膚生検切片を対象としたモノクローナル抗体を利用した免疫組織化学法を確立し、日本紅斑熱の早期診断に応用してきた。今年度は,(1)皮膚生検標本のパラフィン包埋サンプルを用いたPCR法による日本紅斑熱DNAの検出法の確立、(2)和歌山医大P3実験室を利用した日本紅斑熱リケッチアの感染動物実験よる感染機序の解明を計画した。 【結果】(1)脱パラフィン切片から高品質DNAを抽出する手技を確立し,感染L細胞の標本から紅斑熱リケッチアDNA:17k genus-common antigenおよびcitrate synthase(gltA)のReal-time PCR(SYBR-Green法)による検出条件を確立した。皮膚生検標本では再現性が不十分で、PCR条件を検討中である。PCR産物の長さが100塩基対程度になるよう検討している。(2)マウス(正常マウス,免疫抑制剤=シクロフォスファミド投与マウス,およびヌードマウス)の腹腔内にL細胞内で培養したR.japonica,Aoki株を投与し,感染の成立を観察した。免疫抑制状態でも動物は特別な症状を呈さず,死亡もしなかったため,1ヶ月後に屠殺した。PCR法により,ヌードマウスの肝臓および脾臓からリケッチアDNAが検出された。病理組織学,免疫組織化学,PCR法,血清学による解析を継続している。
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