研究概要 |
死亡例が毎年散発するリケッチア症である日本紅斑熱(四類感染症)は,迅速で確実な診断法の確立が求められる。我々はこれまで,日本紅斑熱を疑う患者の刺し口や発疹のホルマリン固定パラフィン皮膚生検切片を対象としたモノクローナル抗体を利用した免疫組織化学法を確立した。平成19年度から皮膚生検のパラフィン包埋サンプルを用いたReal-time PCR法による日本紅斑熱DNAの検出法の確立へ向けて条件検討をしてきた。今年度は,(1)試料収集を引き続き行う,(2)感染培養細胞の作製,(3)酵素抗体法染色の特異性の検定,(4) in situ hybridization (ISH)法による病原体の特異的同定法を開発,(5) Real-time PCR法の検出条件の決定,(6)研究の総括を計画した。【結果】(1)平成19年度に引き続いて,日本紅斑熱疑いの患者の試料収集を行った。皮膚生検のホルマリン固定パラフィン包埋に加えて,血液や尿の収集も行った。(2)L細胞にO. ts-utsugamushi(強毒株・弱毒株)を感染させ,ホルマリン固定パラフィン細胞ブロックを作製した。(3)現在使用している抗体はツツガムシには反応しないが紅斑熱グループには反応する。R. japonica特異抗体の開発が課題として残った。(4) R. japonica特異的に反応するprobeを作製し, R. japonica感染L細胞を陽性コントロールに条件検討を行った。顆粒状に染色された陽性像を確認した。(5)安定した高品質DNAを抽出する手技を確立した。R. japonica特異的に反応するPrimer: R17k common antigenを使用してSybr green Real-time PCR法を確立した。(6)日本紅斑熱の早期診断法を確立し,以上のデータを総括して国際学会(フランス)・国内学会で発表を行った。
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