研究課題
基盤研究(C)
アゾール剤耐性獲得に寄与する病原真菌ABCトランスポーターの薬剤排出機構の解明と新規抗真菌薬の開発を視野に入れた基礎研究を行った。病原真菌のABCトランスポーターを発現した出芽酵母を用い、ポンプ阻害剤とアゾール剤を組み合わせてポンプ阻害剤に非感受性の変異ABCトランスポーターを多数分離した。変異部位の同定と変異トランスポーターの生化学的性状を解析し、ポンプの基質特異性、アゾール剤排出能、ポンプ阻害剤の結合部位などを明らかにした。C. albicans のABCトランスポーター遺伝子CaCDR1に変異を誘導し、ポンプ阻害剤FK506に非感受性となる変異を17種類同定した。これらの変異CaCDR1遺伝子を出芽酵母にそれぞれ発現させた株を作製し、薬剤感受性試験および阻害剤感受性試験を行った。ほぼすべての変異株は、fluconazole、rhodamine 6G、cycloheximideに対する耐性を保持していた。しかし、8番目の膜貫通αへリックスにN1240D変異を有する株はローダミン6Gに対する耐性度が著しく低下し、1番目の膜貫通αへリックスにN535I変異をもつ株はfluconazoleに対する耐性度が特異的に低下した。この結果は、CaCdr1pにおけるFK506による阻害効果とCaCdr1pの薬剤輸送との間に相関があることを示唆している。さらに、変異株は構造の異なる阻害剤、enniatin Bとbeauvericinに対しては野生型CaCdr1p発現株と同程度の感受性を示したことから、本研究で同定した遺伝子変異はFK506に対する感受性を特異的に低下させるものであると考えられた。変異部位の特徴から多種の基質輸送の仕組みを解析し、病原真菌の細胞外輸送の理解を深めることが可能となった。新しい作用部位を標的とする新規抗真菌薬の開発が困難な現状で、将来ポンプ阻害剤の併用により既存のアゾール剤の優れた特性を生かすことができれば、この研究の意義は大きい。
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