研究概要 |
ラットHTLV-I感染モデルにおける抗HTLV-I免疫を細胞レベルで解析することを目的とし、F344ラット特異的MHC-IであるRT1-Al拘束性エピトープを認識するT細胞を活性化、および検出する系を確立した。MHC-I/β2マイクログロブリン/エピトープペプチドをコードする塩基配列を1つの遺伝子として繋げ、融合蛋白として発現させることによりMHC-I単鎖三量体を作製した。MHC-I単鎖三量体は細胞表面に発現させることにより、抗原性の無い細胞を抗原提示細胞に変えることが可能であるとともに、MHC-IのC末端にEGFP遺伝子を繋げることでテトラマー法と同様にエピトープ特異的T細胞を検出できるという利点を持つ。RT1-Al、ラットβ2マイクログロブリン遺伝子、およびHTLV-I Taxのエピトープ配列を結合して発現ベクターに導入した後に, T細胞の活性化を指標に発現蛋白のTCR認識を検証した。その結果、Tax発現MHC-I単鎖三量体がTax特異的CTLを刺激しIFN-γ、およびTNF-α産生を誘導することが確認され、構築したMHC-I単鎖三量体がTCRを認識可能であることが示された。次に構築したMHC-I単鎖三量体/EGFP融合蛋白発現ベクターをヒト細胞へ導入し、Tax特異的CTL細胞株と共培養したところ、EGFP融合蛋白のTax特異的CTL細胞株への特異的な移行が確認されたことから、Tax特異的T細胞をEGFPの蛍光を指標にして検出可能であることが示された。さらに、この方法によりHTLV-I感染ラット末梢血中のTax特異的T細胞も検出可能であることが確認された。本研究の成果は、今後HTLV-I特異的免疫誘導や、感染個体におけるウイルス特異的T細胞の動態解析に有用であると考えられる。
|