研究概要 |
水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)ま単純ヘルペスウイルス(HSV)と遺伝子産物の類似性は高いが、HSVの侵入に必須なglycoprotein D(gD)をVZVはコードしていない。HSV gDはglycoprotein H(gH)と複合体を形成し、宿主細胞膜上に存在するHVEMと結合することで侵入するが、VZVのgHの役割はまだ不明な点が多い。またVZV gBはHSV gB同様ヘパラン硫酸に結合するが、Fcレセプター活性を有するgEと複合体を形成して初めてその機能を持つ点が異なる。さらにgB,gE,gllは抗体による中和活性という点から臨床医学的にも重要視さており、糖蛋白質ワクチンは動物実験で試行され有効性が報告されている。gHはgLと複合体を形成し、gLはgHの分子シャペロンとして機能している。VZV gEと結合しウイルスの中和や細胞間の感染の広がりを抑制する分子としてinsulin degrading enzymeについて報告がなされた。本研究はHSVとVZVの違いに着目しながら、HSVで近年非常に注目されているエンベロープ糖蛋白質と細胞側レセプターの研究で、VZVの独自の役割を解明することを目的とした。 VZV gHの精製に先立ち、抗gHモノクローナル抗体を結合させたカラムを作成し、これにVZV感染細胞抽出液をアプライ後溶出し、抗gH抗体と反応性のある蛋白質を精製した。精製画分の電気泳動パターンから分子量約100kDa付近のgHと思われるメジャーバンドと、15kDa付近にも蛋白質が検出され、こちらはgHと複合体を形成するgLと考えられた。この精製画分をEAHセファロースに結合させgHアフィニティーカラムを作成した。 VZV gHと相互作用のあるウイルス由来の蛋白質の分離 VZV感染HEL細胞の抽出液をgHアフィニティーカラムにアプライし、1M NaCl,1.5M NaCl,グリシンHCl(pH2.8),50%エチレングリコールを含む緩衝液で溶出を試みた。SDS-PAGEの解析により、50kDa〜80kDaにかけて複数の蛋白質のバンドが検出された。またウエスダンプロッティンクから60k,65k,80kの各バンドが反応性を示し、これらがウイルス由来蛋白質(gB,gE)である可能性が示唆された。さらにこれらの蛋白質はS-S結合で複合体を形成し、非還元状態では200kDaといった大きな複合体を形成していることがわかった。現在これらのウイルス由来蛋白質の発現系を作成し、相互作用ならび共局在性について解析している。 VZV gHと反応性のある宿主細胞由来の蛋白質の分離精製 宿主由来の蛋白質でgHと相互作用を持つものを分離精製し同定を行うため、非感染HEL細胞の抽出液をgHカラムにアプライし
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