研究課題
我々は国内外のグループが共同で2005年に開発に成功した組換え体感染性C型肝炎ウイルス(HCV)の感染性粒子産生実験系を用いてこれまで全く不明だったHCVのウイルス粒子産生機構の解析をおこなった。これまでに電子顕微鏡による観察から、HCVコアタンパク質は脂肪滴膜表面に局在化しているが他のHCVタンパク質は脂肪滴周辺の近傍膜構造に局在化していること、そして、ウイルス粒子は脂肪滴とその近傍膜構造が接する領域からその膜構造内へ出芽しているを示した。このことから感染性HCV粒子の形成そのものが脂肪滴周囲で行われていることが明らかとなった。この結果はこれまでに報告のない新規の事実を明らかにしたことになり、脂肪滴の新たな機能の発見にも繋がる重要な結果と考えられる。そこでこの脂肪滴周囲における感染性ウイルス産生機構の詳細をさらに解析するため、ウイルスゲノム複製は可能であり、コアタンパク質も野生型組換え体感染性HCVと同一であるが感染性ウイルスを産生しない変異体型組換え体HCV複製細胞と組換え体感染性HCV産生細胞から細胞分画法によってそれぞれの脂肪滴画分を精製してその構成タンパク質の比較をおこなった。ウイルスタンパク質に関してはイムノブロット法による検出は可能であったが、現時点ではタンパク質染色による検出はできていない。また野生型と変異型の脂肪滴画分間で著しく存在量の異なる細胞側タンパク質は今のところ同定されていない。ただイムノブロット法による検出結果からは精製脂肪滴画分中のコアタンパク質の量が野生型と変異型間で著しく異なっていた。現在、この現象に機能する細胞側の因子についてさらに詳細な検討を進めている。
すべて 2007
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Nature Cell Biology 9
ページ: 1089-1097