本研究ではEBV発がんの分子機構を解明するために、EBV潜伏感染遺伝子Latent membrane protein(LMP1、 LMP2aのB細胞形質転換機構の分子作用メカニズムの解析を行った。今年度計画として、1)LMP会合分子のプロテオミクス解析、2)LMP会合膜表面分子の検索、3)ハイスループット(HTS)抗LMP1作用薬剤スクリーニング法確立の試み、に焦点を絞り解析した。その結果、LMP下流シグナルに関与する可能性のある7分子を同定した。いずれの分子もLMPの発現により細胞内局在を変化させることが明らかとなった。特にLMP依存性B細胞形質転換作用に関与する細胞増殖・生存制御を司る推定分子としてp73結合分子Ranbp9がLMP下流シグナルに存在することが示唆された。現在、B細胞生存への関与を検討するためにRanbp9ノックアウトマウスを作成中である。また、EBV依存性発がんにおけるRanbp9の関与を明らかにするために、EBV誘発ヒトLymphoblastic Cell Line(LCL)を用いたRanbp9遺伝子ノックダウンによる細胞増殖活性の変化を検討している。3)項のハイスループット(HTS)抗LMP1作用薬剤スクリーニング法確立の試みに関して、今年度はB細胞生存に関与するTRAF3とLMP1との相互作用に焦点を当て、最終的にEBV阻害薬の候補薬剤を選別するシステムの基盤構築を試みた。 LMP1は細胞膜表面上でTRAF3と恒常的に会合することが明らかとなっているが、申請者らはTRAF3の細胞内局在はN-末端側RINGフィンガードメインに規定されていることを明らかにした。LMP1非存在下においてTRAF3は細胞質内広域に存在するが、RINGフィンガードメインの点突然変異体は細胞内の細胞内オルガネラに局在し、細胞質内に拡散できないことを見いだした。TRAF3が他のTRAFファミリーとRINGフィンガードメインを介した酵素活性に関して特異性を有していることより、LMP1-TRAF3直接相互作用以外のTRAF3RINGフィンガードメインと未知のタンパク相互作用を抑制したLMP1-TRAF3相互作用頻度の低下をもたらすことによって抗LMP1作用を発揮できる可能性が示唆された。
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