研究概要 |
(1)2000年7月〜2002年10月にタイ国ランパン県ランパン病院HIV外来を受診し、コホート研究参加に同意した、多剤併用抗HIV療法未実施の全てのHIV陽性患者756名を対象とした。エントリー時にCD4数、HIVウイルス量を測定し、カルテより患者情報を得た。756名中血漿検体が得られた712名についてRNAを抽出し、GBV-C特異的5'-NCR primer setを用いたreal-time RT-PCRを施行し、さらにGBV-C陽性例においてEnv領域のシーケンスにより遺伝子型同定実験を実施した。その結果、GBV-C陽性率は67名(9.4%)で、G2型が19名(28%)、G3型が33名(49%)、G4型が15名(22%)であった。 (2)これらのGBV-C実験データをコホート患者の臨床データへ連結し、GBV-C共感染がCD4数とHIVウイルス量および生存予後に及ぼす影響を解析した。GBV-C共感染者群は、非共感染者群に比較して有意にHIVウイルス量が低く(中央値88056vs161251;p=0.03)、CD4数が多く(251vs126;p=0.005)、生存予後が良好(Kaplan-Meier生存曲線解析)だった。さらに、GBV-C共感染者の中でもGBVウイルス量が多い(100コピー以上)群とGBV-C陰性者群で比較すると、CD4値でp=0.0002、HIVウイルス量でp=0.007と結果はさらに強く現れた。また、HIVウイルス量では有意差が出なかったが、G2型はG3、4型に比較し有意にCD4数が多く(275vs139,p=0.01)、G2型群においてのみ生存予後が良かった(K-M生存解析)。 (3)GBV-C陽性の抗HIV抗体陰性配偶者においては、GBV-C陽性者が多く、またG2型が全体の50%と、G2型が多い傾向にあった。GBV-C既感染、特にG2型はHIV-1感染を抑制することが示唆された。 (4)感染性分子クローンを用いたin vitroの実験系において、G2,G3,G4全ての型でGBV-C共感染はPBMC培養におけるHIV感染を抑制したが、その中でG2型が最も強力な抑制作用を示した。
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