本研究では、HLAアリル多型性がT細胞の抗ウイルス機能に与える役割を明らかとするとともに、このシステムにウイルス因子が及ぼす影響を解析する。本年度は、HLA-B35拘束性の2つのNefエピトープに対するHIV特異的CTLの抗ウイルス活性を解析するとともに、抗ウイルス活性の違いをもたらす要因について検討した。その結果、以下の3点を明らかにした。 1.感染早期に主要な応答を示したVY8エピトープに特異的なCTLの抗ウイルス活性は非常に強く、慢性期に主要なRY11エピトープに特異的なCTLの抗ウイルス活性は弱かった。 2.それぞれのエピトープに特異的なCTLからT細胞レセプター(TCR)をクローニングし、TCRを再構築して、TCRと抗原ペプチドの相互作用を解析したが、エピトープ間で大きな違いは見いだせなかった。 3.一方、HLAクラスI分子からのエピトープペプチドの解離を調べたところ、エピトープ間で大きな違いが認められた。VY8エピトープの方がHLAクラスI分子からの解離が顕著に遅く、非常に安定な複合体を形成していることが分かった。 このように、ペプチド配列が重複する良く似た2つの抗原ペプチドに対するCTL応答を解析することにより、ペプチド・MHC複合体の安定性が、TCRによる抗原認識を通じて、HIV特異的CTLの抗ウイルス活性に大きく影響することが明らかとなった。
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